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矢田が、俺の首筋にかみついて、そのまま鎖骨をなめて、徐々に下に下っていったが、俺は自分が何をされているのか、わからなかった。想像もつかなかった。
「抵抗しないんや?」
矢田はつまらなそうにそう言った。
俺にはその意味がわからなかった。
ただ、怖いと思った。
ただ、怖いって感情だけで。
「可愛い」
「…ぁ」
俺は矢田が何をしようとしているのか、ようやくわかったが、その時点で、俺には逃げ道なんてなかった。
いつの間にか両手をつかまれて、自由がきかなかった。
おかしいな、俺の方が力はあるはずなのに、とか、そんな疑問よりもパニックになるばかりだ。
「今更、遅いって」
「ふざ、けんなぁ…」
「そんな顔して言われてもな」
矢田はそう言ってにやにやと笑う。
俺は恥ずかしく感じて、瞳をそらした。
だが、矢田は俺の頬をつかむと、また、真っ直ぐに矢田の顔が見えるように、導いた。
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