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=ナオキside=
矢田が落ち込んでいるみたいだったから、慰めようとしたら、そのまま押し倒された。
俺は、何がどうしたのかわからなくて、呆けていたら、矢田は俺の上にまたがって、微笑んだ。
その顔がものすごく怖かった。
まるで、俺の知っている矢田じゃないような気がした。
柄にもなく、俺は小刻みに震えた。
自分でも自分自身、根性すわっていると思っていたのに、そんな様だ。
「…っ」
矢田の手が俺の頬に触れた。
その手があまりにも冷たくて、俺はびっくりした。
だが、そんなことよりも、そのまま顎を持ち上げられた時には言葉を失った。
キス、されたんだ。
意味がわからない。
俺は衝撃のあまり、何も言えなかった。
普通なら叫んだり、蹴飛ばしたり、するところだ。
怒るとか、それか、悲しむとか、だが、俺は何もできなかった。
ただ、思考がついてこない。
ただ、状況が理解できない。
どうしていいのか、わからない。
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