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俺は立ち止まった。
「ごめん」
「え、なんで兄さんが謝るんだよ?」
「いや、余計なことまたしようとしていたのかもしれないと思って」
ああ、悲しくなってきた。
空しい。
俺は何かしてあげたいと、何かできないかと願うが、いつも、何もできない。
余計なお世話ばかり焼こうとする。
それだけで、迷惑だ。
迷惑だけど、わかっているけど。
俺は何か、その人の役に立ちたいと願う。
行き場のない感情が、胸の中で、溢れた。
苦しくなった。
「…ぇ?」
急に、俺の体が宙に浮く。
俺は今何が起こっているのかわからない。
ただ、反転した視界では、空に星が輝いていることしか、わからなかった。
「うわぁ!」
重力に押されて、背中から地面にたたきつけられる。
さっきまでナオキと繋がっていた携帯は、俺の手から離れて、どこかへ飛んで行っていまったようだった。
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