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「ナオキ」

「なんだよ」

「そないなことしても、諦め、つかんのとちゃう?」

矢田はお笑い番組を見ながら、そう言った。
やべぇ、恥ずかしい。
矢田はテレビに夢中で、俺がこんなにも携帯ばかり気にしていたとか知られていないと思っていたからだ。

「……だってさ」

それでもどうしようもないだろ。
俺は投げ飛ばした携帯を見つめた。

「ナオキ」

矢田は俺の名前を呼ぶと、テレビの電源を消した。
お笑い番組独特の笑い声が俺の部屋から消えた。

「なんだよ?」

俺は問いただしたくなった。だってさ、さっきの番組、矢田が好きなやつだった。
なのに、番組の途中で消すなんて、どうかしている。

「矢田?」

いつも、にこにこしている矢田が深刻な顔をして、こっちに来る。
俺は携帯のことも兄さんのことも忘れて、矢田を見上げた。

「ナオキ」

「え?」

目の前まで来ると、矢田は腰をおろして、俺のまじかに顔を置く。

「好きやって言ったら、どうないする?」

「誰が…誰、を?」






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