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=土屋side=
杉田が星を見るのが好きだとか、意外だな、と思った。
だいたいあの大きい家も意外だった。
そして、暗くならないうちに送っていくよ、とか言って、俺の家の近くまで送ってくれたことも意外だった。
意外だった。
もっと知りたいと思った。
俺の知らない杉田のことも…
あの、お母さんとの言い争いも…気になっていた。
杉田には黙っていたけど、聞こえていたんだ。
俺がいた、杉田の部屋まで、二人の声。
はっきりと全部聞こえたわけじゃないけど、杉田は部屋に帰ってきたとき、悲しそうな顔をしていたから、それがいい話ではないのだとわかった。
俺は、何か、言葉をかけたいと思った。
だけど、何も思い浮かばなかった。
何もしてあげられない自分に気がついた。
―――昔のことを思い出した。
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