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「矢田」
「?」
「元気出せよ?」
俺がそばにいるだろ?とナオキは俺を抱き寄せてくれた。
やけど、わかってるんやわ。
こんな風に意識しているのは俺だけ…
ナオキは俺のことなんて、まるで、弟のようにしか想ってへんわ。
世話のかかる弟のようにしか。
やのに、馬鹿やわ。
こうして、抱きしめられることさえも嬉しいなんて。
ほんま馬鹿やわ。
ああ、涙、もっと、流れてきたやんか。
「ごめんな。こんな俺で」
「矢田、今さら何言ってんだよ」
「ありがと。やけど、ほんま、ごめんな」
俺はそう言って、ナオキのおでこに唇を寄せた。
ナオキはきょとんとした顔をして、俺を見つめた。
この至近距離はやばないか?
限界やわ。
もう…
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