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「…矢田?」

「なんやねん!」

「何、泣いてんだよ?」

「え?」

ああ、駄目やわ。
視界が滲んでる。
俺、泣いてるみたいや。
格好悪い。
信じられへん。
もう、嫌や。嫌やねん。

こんな気持ち嫌や。


「ゴミでも入ったのかもしれへんわ」

ごまかしてみた。

「あ、そういや、俺、今日、予定あったんやわ、帰らな」

「嘘つくな!」

「ほんまや!」

「嘘だ!」

「なんでそないなことわかるんや!」

「何年の付き合いになると思ってんだよ!」

「……そうや、悪かったわ。嘘やわ。嘘やけど」

俺は口ごもる。何か言いたかったのだが、その何かが上手く言葉にならへん。






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