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夕暮れに切なさを覚えたわ。ほんま、に。
でさ、俺は、いつまでもこんな公園に一人でいることの淋しさに気が付き、立ち上がったんやわ。
すると、声がした。
声がしたんや。
俺の、名前を、呼ぶ、君の声や。
「ナオキ?」
俺はあたりを見渡したわ。
すると、呆れた顔をしたナオキが公園の入り口からこっちに向かってくる。
「矢田、お前な、声でかいぞ?」
そこまで聞こえていた、と、ナオキは眉をしかめたわ。
やけど、そんなこと、俺には関係ないんや。
「!」
「ナオキ」
俺は手を広げて、走っていく。
やって淋しかったんやもん。
「ちょ、飛び着くなっ!」
「いいやんか!」
俺はここが外だとかそんなことは気にもとめないで、ナオキに抱きついた。
やって、さ、恋しかったんやもん。
この体温が。
「ばばかば、馬鹿!」
ナオキはやっぱり俺の腕の中で抵抗したわ。
「放せ、キレるぞ?」
「やって、ナオキ、俺、淋しいんやもん」
「は?」
俺は説明した。
カラオケに二人残してきて一人ぼっちだったと。
ナオキはこういう淋しいんだという言葉に弱いから、一人って言葉に甘いから、こうやって簡単に俺につけ込まれるんやで。
ごめんな。
俺はいつも君の優しさを利用しとるわ。
最低やわ。
でも、こんな自分、嫌いやないで。
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