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=矢田side=
俺は真面目に昼からも授業に出ていたんや。
窓際最後尾。やけど、携帯をさわったりしないで。
「さ、ここテストに出るぞ?」
黒板の前ではにこにこと楽しそうな佐田先生がいる。
「あ、また、佐田先生、テストに出るところ線引いたぜ」
俺の隣に座る、鶴部は楽しそうに、ノートを開いた。
めずらしいわ。鶴部がノートに日本語を書いとる。
「あ…!」
「え?」
急に鶴部は俺の机に手を置くと、校門の方を見つめて叫んだ。
俺も校門を見つめる。
ああ、楽しそうに、学校から出て行く、ナオキと真城の姿があるわ。
「信じらんねぇ!」
鶴部はまたもや叫んだわ。
「どうした、鶴部くん」
ぽあぽあとした空気をまとった佐田先生は不思議そうに、こっちに向かってくる。
鶴部は「たいしたことじゃないんです」と言って、机にちゃんと座った。
佐田先生は「そう?」と言って、黒板の前に戻ると授業の続きを始めた。
本当に可愛らしい先生やな。
やけど、俺の心はちょっと荒んでたんや。
どうして、ナオキは俺に一言もなく
学校を出て行ったんやろ。
いつもなら、声、かけてくれるのに。
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