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=杉田side=
俺は星を見るのが好きだった。
だけど、星の名前も何も知らない。
ただ輝いているなって、綺麗だなって。
そんなことしか、わからなくて。
それでも俺は星を見るのが好きだった。
ただ、こうして眺めているのが好きだった。
「あれ…?」
「おはよう」
俺は俺のベットで瞳をこする土屋に言った。すると土屋は「え?」とあたりを見渡した。
「あ、そっか、ここ、杉田の家か」
なんだ、そうか、と土屋は小さく笑った。
それがとても愛おしくて、俺も小さく笑った。
結局、あのキスの後、俺は何もできなかった。
ただ満たされた気持になって。
何も言わずに土屋を抱きしめていた。
土屋も何も言わずに俺の腕の中にいた。
二人でベットの上で、一つになれた。
そんな気がした。
「杉田、それ何?」
土屋は俺が使っている望遠鏡を見つめて言った。
「望遠鏡かな? 俺、これで星を見るのが好きなんだよ」
「俺も見たい」
「ああ、じゃあ、ほら、おいでよ」
「おう」
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