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「え?」
俺は固まった。母はそんな俺に気遣いもなく話し続ける。
「話が通じそうな子に話してみようと思うのよ」
「よ、よせ、土屋は関係ない!」
「そう、土屋くんね。わかったわ」
母は頷くと、俺の部屋に向かおうとした。
俺は必死に止める。
この人に関わっていいことなんてない。
特に土屋のような純粋な子には…
「わるかった。俺、謝るから」
「はじめから、そうしたらいいのよ」
足を止めると母は微笑んだ。
心底、心がねじれそうだ。
「そういえば、昨日の喧嘩事件はなんだったの?」
警察から連絡がきて、迷惑したのだと母は言う。
ま、夜遅くに迎えに来させたのは悪かったとは思うし、いちおさ、昨日、謝ったはずだ。
でも、理由までは説明していなかった。
だいたいしたらしたで怒るだろう。
俺は知っていた。
こういう時、一番いいのは、相手が望むことを言うことだ。
そう、
「向こうが絡んできた」
俺は嘘を吐く。
これ以上、めんどくさいことになりたくない。
「じゃ、むこうが悪いのね」
母は確かめるように聞いてくる。
本当は俺のほうが喧嘩をはじめたのだが、
まぁいっか。
「うん」
「そう」
でも、と母は俺をじっと見た。
「絡まれる方にも問題はあると思うわ。だいたい、何よ。その髪の色。しばらく見ないうちに」
「……」
そして、母の小言はかなり続いた。
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