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「どうしたの、その顔」
母はそう言って、俺の頬に手をのばした。
きっと、さっき、土屋の弟に殴られた頬のことを言っているんだろう。
俺は何も言いたくないというしぐさで母の手を払いのける。
「どうでもいいだろ!」
「どうでもいいわけないでしょ!」
母は叫んだ。
「今、何時だと思っているのよ。学校はどうしたのよ。めずらしく友達連れてきたかと思えば、まだ、授業やっている時間帯でしょ!」
「どうだっていいだろ!」
関係ないと、俺は言った。
すると、母は、
「わかったわよ」
と言う。
聞きわけがこうもいいと不気味だ。
いつもなら、もっと食い下がってくるのに、だ。
「あの子、名前はなんて言うの?」
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