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「それにしてもすごいな、杉田の家」
しばらくして、土屋はそう言って立ち上がり、あたりを見渡した。
「そうか?」
俺は何がすごいのかわからなくて聞いた。
すると、土屋は「すごい」と繰り返す。
「わりぃ、全く何がすごいのか、俺にはわからない」
普通じゃないのかって思った。
だから、そう言った。
土屋はそんな俺に驚いた顔をした。
ああ、そういえば、昔、ガキの頃、も、
そうだった。
「気を悪くしたか?」
俺は素直に聞いた。
そうだ。
どうしてかはわからないけども、俺の家をうらやましがる奴に、
どうしてそんなことを言うのかわからないと答えたら、
たいていの奴は顔色を変えて、俺から離れて行った。
だから、急に怖くなった。
土屋も離れて行ってしまうんじゃないかって。
なのに、
「え、そんなことない!」
と、土屋は力強く言ってくれた。
嬉しかった。
初めてだった。
俺なんかのために必死になってくれた人。
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