36
「に、しても、すっげぇなこれ」
杉田の部屋には、いくらするんだろうっていう絵が飾ってあったり、花瓶もある。
俺は飲み物を持ってくると言って杉田がいなくなった部屋で、一人、きょろきょろしていた。
なんだろうか、
急に、杉田が遠くに感じた。
どうしてなんだろうか、
何も、杉田は変わっていないのに。
「あれ?」
俺は部屋の端に伏せられた写真たてを見つけて、つい、手に取ろうとした。
そこで
「土屋」
と、杉田が部屋に帰ってきた。
俺はすぐさま何もなかったかのように、ごまかして、杉田が持ってきてくれたジュースに口をつけた。
それは俺が好きでよく飲んできた、オレンジジュースだった。
馬鹿らしい。
何が、別世界の人間みたいとか、思っていたのだろ。
「よかった、俺さ、それ、土屋好きそうだなって思ってたんだ」
気にいってもらえたみたいでよかったと、杉田は笑った。
かわらない。
ちょっと、
遠くに感じて、不安に思ったけど、
杉田は杉田だった。
そう、杉田は杉田なんだ。
[*前] | [次#]
目次に戻る→