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だけど、
―――兄さんには俺の気持ちはわからないんだ!
ナオキにそう言われた時、はっとした。
俺は自分がいいと思ったことをしていたけど、
それがナオキにとってもいいことなのかはわからない。
俺だけの価値観で、ナオキの幸せをはかっていた。
だから、ナオキはナオキの人生を歩めずにいたのかもしれない。
俺が無茶苦茶にしてしまったのかもしれない。
ナオキは一度、こうも言った。
―――俺の人生をかき乱さないでくれ。
それはどんなに辛いことだっただろうか?
残酷なことなのだろうか?
「その、本当に、俺、ずっと謝りたくて」
謝ってすむことではないと分かっていた。
だけど、変わらない過去だとしても、俺は、けじめとして、謝っておきたかった。
ナオキはにこっと笑うと「いいよ」と言ってくれた。
俺は驚いた。
そしてそんな俺には構わず
「ケー番変わってないから」
とナオキは教えてくれた。
「あ、ありがとう」
俺は、泣きだしそうになった。
いや、すでに泣いていた。
本当に、泣き虫だ…
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