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ここは引きずっている場合じゃない。
せっかくこうしてここにいるんだから、
今を楽しまないともったいないし、
幸崎先生に失礼だ。
「杉田、俺、たこ焼きが食べたい!」
「あ、あそこで売っているみたいですよ?」
俺は商店街の中にあるたこ焼き屋さんを指差した。
「えー。何処?」
幸崎先生はきょろきょろとあたりを見渡す。
まるで小さい子供のようだった。
「ほら、あそこです。ちょうど、中学生二人がいる…」
あれ? と俺は固まった。
中学生って今、帰宅時間だっけ?
隣町の制服だけど、隣町って俺の母校だったけども、
こんな時間に帰れることなんてなかった。
え?
「杉田。あいつらもおサボりみたいだな」
幸崎先生は何気なくそう言った。
だが「……そうですね」としか、俺にはこたえられなかった。
「?」
「なんでもないですよ?」
俺は痛んだ胸に手を当てて、笑った。
本当は今にも逃げだしたい衝動に駆られていたけど。
ああ、懐かしい。
俺もあの頃は……
あの…
あれ?
あいつら、
どこかで見たことがあるような…
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