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=ナオキside=


「しまった。俺、兄さんに会っての一言目、考えていない」

商店街に差し掛かると俺は自分に絶望しかけた。


「そんなの会った時に自然と出てくる言葉でいいじゃないか。出てこなかったら、お久しぶりからはじめたらいいし。それに、もしかしたら、あっちから話をふってくるかもしれない。それに…」

考えてもその通りに行かないこともあるんじゃないの?

と、真城は言った。


その通りだ。
俺は兄さんと、少しでも、
長く一緒にいたかった。
兄さんのなかは俺だけになればいいと思った。

だけど、失敗したんだ。


考え過ぎても上手くことが運んだ試しなんてない。なら、いっそ、楽しく、今を過ごしたほうがいいのかもしれない。


「ほら、ナオキ、そこでたこ焼き買ってきたから、食べてみ」

真城はにっこりと笑った。
いつの間に買ってきたんだよと俺は笑い返した。

だけど、こんな昼間から商店街を制服でうろうろしていても
誰も俺たちを止めたりはしない。
ただ遠目で見ているだけで。






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