12
「ナオキ…」
「今度はなんだよ、真城」
「これ」
真城は素敵にエグイ弁当の中身を俺に見せながら「助けて」と囁いた。
「自分でどうにかしろよ」
「うう」
しかたないか、といいながら、
真城は弁当はつつきだした。
俺は思う。
料理ができない奴ほど張り切るものではない。
悲惨なできになる。
あえて、マニアル通りから逸脱するべきではない。
あと、味見は最低限のマナーだと、知るべきだ。
「真城、一回、あいつに、言った方がいいんじゃないの」
「できないよ」
泣きながら、真城は鶴部の作ったまずい弁当を食べていた。
言えばいいのに。
そしたら、もう、そんな苦しい思いもしなくていいんだ。
なんで、毎日、そんなまずいものを真城が我慢して食べる必要があるのだろう。
「あいつが、悲しむ顔を見たくないんだ。笑っていて欲しい」
真城はそう言うと、また一口、食べた。
あれは卵焼きか、それとも、何かもっと別の食べ物なのだろうか。
「…手伝おうか?」
俺はさすがに見ていて真城がかわいそうになってきた。
だが、真城は「やっぱいい」と言った。
そうか、と俺は頷いた。
そう、
それは、
真城にあてた、鶴部の思いやりだ。
俺なんかが、それを食べたらいけないな。
なんて…
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