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「ナオキ…」

「今度はなんだよ、真城」


「これ」


真城は素敵にエグイ弁当の中身を俺に見せながら「助けて」と囁いた。


「自分でどうにかしろよ」

「うう」

しかたないか、といいながら、
真城は弁当はつつきだした。



俺は思う。


料理ができない奴ほど張り切るものではない。
悲惨なできになる。
あえて、マニアル通りから逸脱するべきではない。
あと、味見は最低限のマナーだと、知るべきだ。


「真城、一回、あいつに、言った方がいいんじゃないの」

「できないよ」


泣きながら、真城は鶴部の作ったまずい弁当を食べていた。

言えばいいのに。


そしたら、もう、そんな苦しい思いもしなくていいんだ。

なんで、毎日、そんなまずいものを真城が我慢して食べる必要があるのだろう。



「あいつが、悲しむ顔を見たくないんだ。笑っていて欲しい」

真城はそう言うと、また一口、食べた。

あれは卵焼きか、それとも、何かもっと別の食べ物なのだろうか。


「…手伝おうか?」

俺はさすがに見ていて真城がかわいそうになってきた。

だが、真城は「やっぱいい」と言った。

そうか、と俺は頷いた。



そう、

それは、

真城にあてた、鶴部の思いやりだ。


俺なんかが、それを食べたらいけないな。

なんて…






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