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=管野side=


俺は馬鹿だ。
そして、みんな馬鹿だ。
馬鹿ばっかりだ。
ああ、なんて素敵な世界。


俺は、立ち入り禁止の屋上で君を見つけた。
悲しそうに遠くを見つめて静かに涙を流しているのは、さっき、クラスの奴に迫られていた可哀相な転校生の北王子。

別に告白されているのを聞くつもりもなかったんだよ。
ただね、屋上は人が寄り付かないから、俺のベストポジションにだったんだ。
むしろそんなところでそんなことをするほうが悪い。
邪魔してやろうって俺が思っても、文句なしだ。
北王子に近づこうなんて身のほど知らずだ。
俺はこの時ばかりは普段のいい人面を忘れていた。
だけど、幸い、俺が何かをやりだす前に、男子生徒は俺の横をすり抜けていった。

一瞬睨まれたのは気のせい。
気のせいだ。

「……あ」

俺は悩んだ。
今なら北王子は俺の存在に気が付いていない。
何も見なかったふりをするなら、今だ。
けど、俺は北王子をそのままにしておけなかった。

馬鹿だよな…

にこやかに俺は君の隙間に入りたいと思うんだから。


「大丈夫だよ」

俺は何もわからないなりに北王子の全てを知っているかのように見せかけて、優しく囁く。


「大丈夫」

北王子に向けた俺の言葉に驚いた。
なんで、俺が北王子の心配なんてしているんだろう。
そんな義理ないっていうのに。


「……本当に、そうだったら、いいのにね」

北王子はまるで独り言のように呟いた。それが、気に食わない。俺なんてまるで、いらないみたいだ。
でもな、北王子。君の言うことにも、僅かな頑なな意思がふくまれているよね?
ちゃんと、わかってんだ。
あの馬鹿が傷ついたこと。
それは自分のせいだってこと。

「さっきの真辺だよね?」

君に告白してふられた男子生徒。俺はその意外性に今も取り残されている。

「うん、そう、真辺くん」

君は悲しそうにうなずいた。
そして、静かに「僕、男なのに…なぁ」とつぶやく。
俺は「そんなの関係ないよ」と口にした。

そう関係ない。
北王子の外見を見てたいての奴はひかれただろう。
だけど、北王子の性別を知ると、途端に諦める。
やはり見た目がどんなに可愛くても性格がよくても、女の子じゃないってあたりで恋愛対象から外されるのだろうな。
いや、世間一般はどうなのかはわからないけど、俺たちの世界はそうだった。
だからか、俺は君を遠まわしに励ましながら、あの真辺がね、と考えた。


頭の中、それで一杯だった。

君のことで、一杯一杯だった。






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