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=杉田side=
「杉田見ろよ、あれ」
俺の前を嬉しそうに幸崎先生は歩いた。
俺はそんな幸崎先生を見つめながら、土屋のことを思った。
今頃どうしているだろうかとか、泣いていないだろうかとか。
いっそ、あのままの関係でもよかったんじゃないかとか。
そう、身代わりでもいいと思っていたはずなのに。
だけど、俺はわかってしまったんだ。
身代わりに対しての愛ってないのだと。
だって、優しさもなにもかも、俺を通して誰かいっているんだ。
それでも、そばにいたい。いてほしい。
そんなことを思ったから。
いけなかったんだろう。
壊していくことしかできないのに。
図書館での土屋の笑顔を想った…
あれが全部、俺にむいていないものなのかと考えた。
少しでもいいから、
ほんの少しでもいいから、
君の気持ちが俺に向いていたらいいのにって。
想った。
考えた。
どうしようもないくらいに…
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