「猫かぶりやめる気にはならないのかい?」

「はいぃぃ?」

「だぁってさ、疲れない? ちょっと無理させたりしたら、土屋はやめっかなって思ったんだけど、そうやっておとなしい子ぶるのかい?」

「え、もしかして、先生って」

「そうだよ、君を風紀部に呼んだのも、委員長にしたのも俺の差し金だよ! なんだかことがスムーズだったと思わないかい?」

言われてみればそうだった。
すぐにあれよあれよといううちに決まった。


と、いうか…


「知ってたんですか? 前の学校の、話」


俺は怖くなってうつむいた。
別に隠しているってほどのことでもない。
だけど、知られたくない。
俺は、ここでやり直すつもりだった。

不良品はもう嫌だ。


「ああ、でも、君は悪くないだろ!」

「…え」


割れた窓ガラスから注いだ風が、カーテンを揺らした。
俺の世界はまた涙でゆがんでいく。


嬉しかったんだ。


そう、俺は何も悪いことなんてしていないんだ。


「ほらほら、泣いてばかりいたらダメだぞ?」

「わかってる、そんなことっ」


それでも涙は止まらなかった。

本当にガキだ。
こんなにも自分のことをわかってほしいだとか望むのは。






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