=土屋side=


片倉先生が相談室に勢いよく入っていったかと思えば、すぐに俺の方を振り返った。
俺は待っていてくれているんだと思って、さらにかけ足になる。

だが、

「…誰もいない」

「見たらわかることをいちいち口に出さない方がいい」

「わ、わかってますよ。そんなことは…わかって」

あれ…?
なんでだろう。
泣けてきた。

ぽろぽろと瞳から涙がこぼれた。

どうしてなんだろう。
どうしてこんなにも…

「ぅ…っ」

駄目だ。
本格的に…とまらなくなった。
片倉先生が隣りにいるのに、俺は馬鹿みたいに泣いていた。

どうしてなんだろう。
何がそんなにも悲しいんだろう。
何がそんなにも淋しいんだろう。
やりきれないんだろう。

ああ、そっか。

杉田は杉田だった。

杉田はあいつじゃない。
あいつじゃないんだ。


そんなあたり前のことがこんなにも…こんなにも…
俺はとんでもない馬鹿だった。

最低野郎だった。






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