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=中佐都side=
放課後、俺は屋上にいた。
蓮見からの呼び出しだったんだ。
なのに、時間通りに蓮見はやってこない。
これはいったいどういうことだろう。
「忙しいのか…」
俺は腰を下ろした。
…それにしても、小雪、ぜんぜん変わってなかった。
成長しているはずなのに、ぜんぜん変わっていなかった。
可愛かった。
なんなんだよ、あいつ。
相変わらず始めはみんなに衝撃を与えるのに、すぐに溶け込んで。
ああ、今日は話すことができなかったな。
多分、明日も話せないだろうな。
いろんな奴から質問責めにされていたし。
「はぁ…」
蓮見はまだこないのか。
何をしているんだろうな、俺。
立ち入り禁止の屋上に上がりこんで。
「はぁ…」
空を見上げたら、夢でも見ている気分になった。
小雪が転校してきたことも、みんな夢だったような、気がした。
俺がこうして生きているのも…
「か〜っずきぃ!」
「え?」
ぶんぶんと両手を振りながら小雪が駆けながら俺を呼んだ。
どうしてここに?
「一樹ぃ!」
うちの学校の制服で?
あぁそういえば転校してきたんだよな。
「小雪?」
小雪だ。
これは夢じゃない。
「小雪」
「かずっ、」
小雪は急に顔面から体制を崩した。
俺はあわてて、滑り込んだ。
きっとコンクリートにたたきるけられるよりは、俺の上にこけるほうが痛くないはずだ。
「だ、はぁっ」
しまった。
俺がコンクリートと小雪の間に挟まれて痛い。
ていうか、さ、俺は、滑り込まなくてもよかったんじゃないだろうか。
もっと普通に支えるとか、受け止めるとか。
「ご、めん、一樹、大丈夫?」
「平気平気」
ただ、自分の格好悪さに落ち込んだだけだから。
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