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「よかったんですか、授業とかほったらかしにして」
片倉先生のとなりを歩きながら、俺は問いかけた。
たしか、まだテスト範囲に追い付いていなかったはずだ。
「土屋、心配してくれるのは嬉しいが、お前が寝ている授業なんてやってても楽しくないし、それに、杉田くんのことが気になって、ちっとも真面目に黒板すら見なかったじゃないか」
とっとと杉田事件を終わらせて、勉強に取り組んでくれよ、と片倉先生は言った。
俺にはその意味がわからない。
別に成績は悪くないし、授業態度もそこそこのはずだし。
何か、いけないことでもあるのかな。
「土屋」
「はい?」
急に片倉先生は立ち止まると、俺の方を向いた。
「杉田とはただの友達なのか?」
「どういう意味ですか?」
俺は眉を寄せた。
すると片倉先生は怒った顔をして、瞳を伏せた。そして「あ、わりぃ」と小さく呟くと、
「深い意味はないんだ。ただ気になっただけというか。ま、忘れてくれ」
と、にっと笑った。
そしてそのまま片倉先生は俺の前を歩いて行く。
その背中が、怖かった。
怖いと思った。
俺は大きな声で叫んだ。
「友達だと、俺は思ってます」
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