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そして、これで、ようやく相談室には俺と杉田だけになる。
俺は何からどのように聞こうかと考えた。だが、
「幸崎も土屋のこと可愛いって思うの?」
杉田のほうがから話題を振ってきたので正直焦った。
「は?」
俺は突然のことでだらしない疑問符を口に出す。
杉田は俺の前にあるパイプ椅子を引き出すと、そこに腰をかけて、だから…と再び口を開いた。
「だから、変な感情寄せてないって聞いてんだけど?」
……俺が聞く前に、杉田の方から確信をつかれて、俺はたじろいだ。
「俺だけだって思っていた。けど、あいつって、男にやたらモテてるよな…?」
「そうなのか?」
俺は杉田の言葉に慌てて聞き返した。
まさか、そんなことになっていたとは思ってもいなかった。
「俺さ、よく、最近、びくびくしながらでも、土屋とは友達なのかってよく聞かれているんだよ」
おかしいよなって、杉田は笑う。だけど「俺もそれは気になるところなんだが」と聞き返した。
だってそうだろ。あんなにも一緒にいるんだ。
図書館の辞書スペースだってもう多くの人に知られていると思う。
いつも放課後とかに楽しそうに土屋が向かうのを追ったことがあるのは俺だけでないだろう。
そこで見せた土屋のあの笑顔を見たのも…俺だけではないだろう。
不安に思う。
自分に向けられたことのないものを
土屋が他の誰かには向けていた。
気持ちが焦る。
別に自分たちはそう言った関係でもないのに。
自分の中で土屋が特別なだけに…
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