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「あ、杉田、遅かったじゃないか」
俺は杉田の名前だけを呼んだ。
そう、これは土屋には関係のない話だから。
だが、土屋はかみついてきた。
「責任者は何をされているんですか? 交代制で、お説教する人決めてるんですか?」
「え、いや、たまたま学年主任が授業で、俺がその間、来たら、足止めしておけって言われてて。だから、俺は何も杉田を怒るとかしない。ただ、話してみたいなってずっと思っていたんだ、個人的に」
だから、土屋は席を外してほしい。
「それに学年主任は君の風紀委員会の顧問だろ?」
と、俺は口にした。
土屋は悔しそうな顔をして、杉田の方を見た。
杉田は「もう、授業に行きなよ」と土屋の頭をこずく。
「…先生。俺は、邪魔みたいなので席をはずしますが、三時間目終わったら走ってここに来ますから、話し合いには勝手に割り込みますからね!」
そう言って土屋は相談室を後にした。
普段の彼からは想像もつかないくらいに感情が高ぶっているみたいだった。
俺は土屋の背中を見送りながら、君にそこまでさせる杉田ってなんなんだよ、と少しだけすねた。
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