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「……杉田、早くしないと三時間目の授業、はじまるぞ!」

「え、ああ、でも、俺、ちょっと先生の所に顔を出しに行かないといけないんだ」

「あ、昨日のこと?」

「めんどいが」

俺はにっこりと笑って見せた。
これからは先生のどうしようもないお話を聞きに行くわけで気分がめげるが、一人でも本当のことを知っていてくれる奴がいると思うとそれだけでいいと思った。


もう先生に何もわかってもらえなくてもいいと思った。


それにこういうことには慣れている。

ずっと俺が悪者扱いでいたのだし。


「平気だ、心配すんなよ?」

俺がそう言うと土屋は「俺も行く」とか言いだした。


「俺も行って、本当のことを話してあげる!」

「いや、土屋はじゅぎ…」

授業に行きなよと言うよりも早く「いや、相談室だろ。俺に任せておけ!」と大股で歩きだす。
その姿が大変勇ましかった。






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