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三時間目の授業がはじまるころに、土屋は学生鞄を持ち立ち上がると「そろそろ登校しよう」と笑った。

だけど、俺は、その前に行くところがあるので、土屋だけを見送ることにした。


図書館を後にするとき、貸出カウンターの向こうにいる図書館の先生と目があった。だけど、先生は何も言わず俺たちを見つめていた。
いつもそう。
俺が此処で授業をさぼっていても何も言わない。
だけど、それが、めんどうだからとかではなく、ただ優しく場所を提供してくれているんだと俺には分かっていた。

ぺこりとお辞儀をして、俺は土屋の背中を押しながら図書館から出る。
先生は小さく「よかったな」と笑った。

俺は急に恥ずかしくなって、土屋の背中をもっと強く押して、すばやく外に出た。


「うわ、びっくりした。急に背中を押すから、こけそうになったじゃないか!」

そう言いながら振り向いた土屋の顔が真っ赤だった。
それを可愛いと思ってしまう俺はもう手遅れだと思う。

正直に言って俺は土屋のどこにどう惚れたのかなんてわからない。


それでもそれでもこの気持ちは本物で。

嫌われたくないって思うんだ。


だから、うっかりとのばした手を戻す。
友達っていう距離感はわからないが、むやみやたらに触るのもおかしいかもしれない。






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