27
土屋が俺に求めているのは友情だから、
こんな気持ちは迷惑でしかなくて…
だから俺は「仲なおりのキス」だとか、ふざけて見せても
釈然としなかった。
冗談なんかでこんなこと、俺ができるわけ、がないのに。
なのに、土屋はただ「なんだよな」って言った。
「ふざけるのはいいけど、次はしないでよ!」
と、顔を真っ赤にして言った。
可愛いと思ってしまったのは仕方ないことだと思う。
「また、泣いたらするかもしれないので、泣かないでください」
俺はそう言って土屋の頭をぐちゃぐちゃになでて、笑った。
笑ったけど、ちゃんと笑えていたかなんてわからなかった。
キスしたことが許されたのは嬉しいことで、
土屋に離れて行かれないことはとても幸せなことで、
だけど、この空虚感はなんだって言うのだろう。
わからない。
ただ俺は何度も土屋の頭をなでた。
「泣くなよ?」
と、呟きながら。
迂闊にも泣きそうになっていたのは俺の方かもしれない。
なんと、情けない話だろうか。
……………
叶えたい夢は胸にしまって、
君とここにいられる今に感謝しよう。
これはとても大切なことなんだから。
こんな気持ちになるのは間違っている。
そう、おかしいんだ。
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