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=杉田side=
怖い夢を見ていた。
いつも、ここで、怖い夢を見ていた。
一人、世界から遠ざかるように、
誰もこない辞書置場で俺は時間をつぶしている。
そこはひんやりしていて、心が落ち着くみたいだった。
だって、俺には似合わないだ。
温かい光とか。
本当に、似合わないから。
こうして、そう、例えるなら、
世界から追放されたような場所が
俺には似合う。
そう思っていた。
だが、ある日、目がさめると、温かかった。
一人じゃないんだって思えた。
土屋が俺の腕の中にいた。
泣き疲れた子供ような顔をして、必死に俺の腕に絡まりついていた。
「……っ」
それが嫌じゃなかった。
どうしてしまったんだろうな。俺。
とても安らかな気持ちになった。
なんだろう。
なんだか、わからないけど、
土屋を守ってやりたいような気持になったんだ。
行かないで…。
そう、呟いて、泣いている土屋があまりにも、見ていられなかったからかもしれない。
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