「恋に落ちたんだきっと、今」

「そうかい。そうかい。よかったね。で、誰に?」

「お前に」

ふぅん。そうかい……って、なんだと。
今なんて言い張りました?

「俺さ、最近つかれてんだよね。だから、幻聴がしたんだろうね。もう一回言えよ」

どうか、聞き間違いでありますように。
俺はそう願いながら、聞いた。
なのに


答えは変わらなかった。



「だから、俺、土屋が好き」


「え、えと…」

俺は必死で、杉田の言葉の意味を考えた。
あ、からかわれてんだ。きっと。

きっと。
そうに違いない。
だってさ、あるわけないだろ。
こんな俺が好きだなんて。そうそう、これは何かの間違いなんだ。




★…☆★☆…☆★☆…★


それからというもの、なぜか、俺は昼休みなると図書室を訪れた。
別に、杉田に会いたいわけじゃない。
なのに、気がつくと辞書置場、彼の定位置にきてしまう。
そしてついつい成り行きで、俺は杉田の話に付き合ってしまう。

杉田は見かけによらず、人懐っこく、よくしゃべる奴だった。

他人とうまく話せない俺なんかとは似ても似つかない。


うらやましい。

きらきらした瞳だとか、生き生きした表情だとか、めっちゃ憧れる。

これのどこが不良なんだろう。
俺にはわからなかった。






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