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「ところで、土屋は何をしてたんだ。こんなところで」
普段、こんな辞書スペースには誰も寄りつかないのに、な、と杉田は言った。
俺は「調べ物」と一言で返事をして、教室に帰ろうとした。
だって、もうすぐ、お昼休みが終わるはずなんだ。
なのに、杉田はよほど物好きとうか、野次馬根性持ってるというか…
「何を調べていたんだ?」
そう言って杉田はタバコに火をつけようとした。
「そんなことより、杉田」
俺は注意しようと右手を出した。
だって、そうだろ。
ここは図書室だ。
「ここでタバコはダメだ!」
すばやく杉田からタバコを取り上げる。
間一髪、タバコには火がついていなかった。
「……っ」
だけど、少し熱かった。
「俺の勝手だろ?」
「そうだ。そうだけど、考えてみろよ。こんな図書室なんかで吸ってたら、すぐにばれる。で、よく考えろ!」
「は?」
「杉田。一回ばれたら、学校じゃタバコ吸いにくくなるぞ」
「土屋、お前…」
急にパアァと顔色を変えた杉田に俺はたじろぐ。
すると杉田はにっこりと笑って「本当はいい奴なんだな」と言った。
「はい?」
「俺の心配してくれたんだろ。さっき」
したと言えばしたのかもしれない。
でも、そんなことを口にするのはすごく恥ずかしくてたえられない。
「な、わけないだろ! 何処をどう解釈すればそうなるんだよ!」
「俺、好きかもしれない」
「何が? ってか、俺の言葉聞いてる?」
「聞いてる聞いてる」
「だったら、なんで、そんな…」
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