3
チャイムの音が何処か遠くで聞こえている。
俺はうっすらと瞳を開いた。
此処はどこで、俺は何をしていたんだろう。
全く分からない。
「よう、目が覚めたか?」
「……?」
声がした方へ瞳を向けると、自分の視界が不完全だということに気がついた。
どうやら俺は眠っていたみたい。
「え、誰?」
まだ回転しない頭で失礼なことを聞いてしまった。
けど、タバコを左手に男子生徒は「俺は杉田っていうんだけど?」と答えてくれた。
へぇ、君が杉田か。先生が手を焼いているというのは君か。
なるほど、君があの『厚生お願いねリスト』にのっていた不良っていう…て、
えぇぇ!?
「何一人で驚いてんだよ!」
「お、おど驚いてるだだなんてて、そんなことないし」
「ぷぅはは」
「笑う事じゃないし、俺に対して失礼じゃないか!?」
「ああ、そうだね。でも、お昼寝をしていた、俺の上でお昼寝をしていた土屋のほうがどっちかっていうと、失礼じゃないのかな」
「え、ぇ?」
俺はこの時、今の状況がどうなっているのか、ようやく理解した。
俺は、あろうことか、杉田の上に馬乗り状態になっていた。
なぜ気がつかなかったんだ。自分。
「わ、悪い」
俺は慌てて杉田の上から退こうとして、勢い余って後ろの本棚に頭をぶつけた。
「……うっ」
痛かった。
思わず涙が流れそうなくらい痛かった。
だけど、ぐっとこらえた。
「馬鹿だろ?」
杉田は俺に向かってそう言った。
俺は楽しそうな顔をする杉田に何も言い返せず、でもそんなの悔しいから、ただ、睨んでおいた。
[*前] | [次#]
目次に戻る→