あ、でも、これで、みんなの視界からは消えたぞ!


て、え?
えぇぇえぇえ?



「何して…?」

俺は自分のこけた下にいる男子生徒に言った。
が、その男子生徒は気持ちよさそうに眠っていて、俺が自分の上に転げてきたなんて、気づいていないようだった。

「わりぃ、今どくからな?」

俺はいちお礼儀として、謝罪をし、男子生徒の上からどこうとした。


「…ぅえ?」

な、なんで?
俺、なんか、俺、強く抱きしめられていて、どけないんですけど…
どうしたらいいのかな?
びくともしないし…

俺は辞書片手に困っていた。
この状況はどうしたらいいものか。

友人にでも携帯から電話をいれ、助けに来てもらおうか?
それとも自力で抜け出そうか?

そう、俺はこの男子生徒の腕の中から離れることばかりを考えていた。

けど、



「ここにいてくれ…」

苦しそうに、呟かれた言葉に、俺は、身動きが出来なくなった。もう少しだけこのままにしておいてやろう。
男子生徒はきっと悲しいんだろう。淋しんだろう。そんな声だった。

俺なんかでも一時の安らぎになるのであれば、後少しくらい時間の都合なんて簡単につく。

「大丈夫、平気だよ」

俺はそう言って、わずかに動かせる右手で男子生徒の頭をなでた。
すこしでも、元気になってほしかったんだ。


俺、誰かが悲しむ顔をするところなんて見たくないなんて、自己中だ…。






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