背筋が凍る。いくら綺麗な人だって言っても、そんなにも顔を近づけられたら嫌だ。だから、俺は勇気をだして、楽しそうに俺に触れてくる彼に足蹴りを食らわせた。どうだ、地味に痛いだろう。特に、俺、足技とかもってないから、一発で倒せないだろうけど、少しくらい、怯んでくれたらいいのにって思ったんだけども…

「人が優しくしてたら、何さ、それ」
彼は叫んだ。俺はどこら辺が優しかったのか質問しかけてやめた。

「…え?」
乱暴にカッターシャツを脱がされて俺は唖然とした。直に殴るつもりだろうか。そりゃあ普通のパンチよりも二倍増しくらい痛いだろう。

彼が右手を上げた時、俺は歯を食いしばった。
絶対に痛いよ、それ!


「……あれ?」


殴られると思ったのに彼の拳はこない。
そしていつの間にか俺の両手が解放されている。
何が起こったのだろう。もしかしたら、さすがに俺が可哀相だと思った神さまが助けてくれたのかもしれない。
けど、今まで助けてくれなかった神様なんてそこにはいなくて、瞬きを繰り返し、前を見つめると、河野さんが俺に殴りかかろうとしていた人を張り倒し、やっぱり険しい顔で俺のことを見ていた。
やっぱり嫌われているのかな、俺。





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