「お客様、こちら、ご試食となっておりますので、よろしかったら」
ずっと立ち話をチョコ屋の前でしていて、迷惑したのか、チョコ屋の店員が、あり得ない大きさのチョコをこっちに出してきた。その兄ちゃんはとてもキラキラした瞳で笑いかけてくれる。とてもいい人みたい。だから、チョコが大好きな俺は喜んで、差し出されたチョコレートをいただこうとしたら、西沢が「結構です」と言って俺の手を握る。
「行きましょう」
西沢は俺の顔も見ないで思いっきり俺の手を引いた。
こんな状況なのに、俺はドキドキしていた。
本当に、俺って、馬鹿だな…
「……ぁ」
西沢の顔を後ろから見ていたら、西沢も顔を赤くしていることに気がついた。
なんだ、俺だけじゃないんだ。
心がふわっと温かい。
ずっとこのままでいたいなんて、考えて、しまった。
俺は西沢に握られた手をそっと握り返す。幸せだと思った。
すると、西沢は俺の手を払って怒る。
「氷上さんは平気なんですか?」
「え?」
人通りの少ない、路地裏で、俺たちは向き合う。
「どうして、いつも通り接してくれるんですか?」
「どういうこと?」

「俺、好きだって、言いました」

「…うん」
ああ、夢じゃなかったんだ…。
「返事は一カ月後でいいと言いましたが、平気なんですか?」
西沢は今にも泣き出しそうな声で俺に問いかけた。
俺は、平気じゃない。
あれから、意識してしまって大変だったのに。
今だって…
「そういう、西沢は、どうなんだよ?」
不安で聞きたくてたまらなくて、でも、素直になるのが何処か怖くて、俺は問いかけを返した。

ああ、俺、西沢が好きなのかもしれない。






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