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紅屋さんと他愛もない一日を過ごして自宅に帰ると、俺はさっそくメールを打った。どうしてだろう。面と向かっていると、あまり言葉もなくただ隣にいるだけで満足してしまいそうなくらいだったのに、メールとなると言葉が多くなってしまう。

俺は大量の文章をできるだけ縮めて、本当に伝えたいところだけを強調した。だって、お礼を言いたかったんだ。


『今日はありがとう。紅屋さんに俺が不良だって知られたら嫌われるんじゃないかなって思っていたのに、軽蔑されなくて嬉しかったよ。その上、俺の、ことちゃんとわかってくれて、嬉しかった。時に、っていうかいつも誤解されて、寂しいっていうか悲しかったから。俺、紅屋さんの言う通り喧嘩好きじゃないんだ。ただね、守りたかっただけだったのに、ただ平穏な日常を大切にしたくて、なのに、いつの間にか、もう俺の周りが喧嘩だらけになって…抜けるに抜け出せなくなって…今に至るんだ…。あ、こんな説明いらないかな。でも知っておいて欲しいなって思ってメールにしてみました』

『俺も、今日は楽しかった。狩野くんと一緒に街を歩けるなんてビックリ。俺ね、調べたって言っていたけど、本当はいつも狩野くんのこと見ていたよ。こんなこと言ったら、嫌われちゃうかな…俺はずっと狩野くんが同じ学校だってことも、狩野くんの日ごろの行いも知っていたんだ。けどね、俺は自分をばらす勇気はなかったかな…俺ってネットやメールみたいに素直になれてないし…普段。だから、ギャップで気持ち悪がれないかなって思ったりしていてその上手く言えないけど俺こそ狩野くんに俺のこと知っておいてほしいなって思って書いてみました。てへっ』


てへって!
紅屋さん…可愛すぎるから、もうっ


『俺は紅屋さんのことあまり知らないけど、俺は紅屋さんのことが好きだよ。だから、これから知っていきたい。それに、素直になれないといっても、元が優しくて天然な紅屋さんだと俺は知っているから大丈夫』

『俺だって、狩野くん好きだよ?』

俺はそのメールを見た瞬間止まった。固まった。いろんな意味で。


『紅屋さん、俺、紅屋さんのこと、好きだよ。恋愛感情かもしれない』


『かもしれないってひどい!』


『だって、まだ、断定していいのかわからないんだ。俺、恋なんてしたことないから』



その後、返信はなかった。







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