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喫茶店で思いっきり叫んでしまって、店にいずらくなった。
「ごめん、恥ずかしい思いさせたよな…?」
「嬉しかったからいいよ」
「紅屋さん」
「狩野くんって気にし過ぎだって。俺にくらい、我がまま言ってもいいんだぞ?」
綺麗な顔で、綺麗にちゃめっけのある笑顔で、紅屋さんは俺の前でくるりと回った。
「じゃあ、その、よかったら、またこうして一緒にいてほしい」
自分でもびっくりするくらいに真剣な声が俺の口から流れた。俺、必死すぎる。
「うん。俺も、狩野くんと一緒にいたいから、いいよ」
ニコッと笑って紅屋さんは俺の方に手を出した。えっと…これって手を繋いでもいいということなのかな…とか俺が悩んでいたら、邪魔が入った。
中村だった。
「狩野さん、こんなことろで何をしているんですかぁ?」
「な、何って…」
俺はどうしてだろう焦った。隠せるはずもないのに、紅屋さんを中村に見せたくなった。
ま、無理な話だけどね。
「ああ…俺邪魔ですね。退散しますわ」
紅屋さんを見ると中村はそう言って冷たい声で俺に笑った。中村っていつも愛想のある奴なのに…どうしてだろう。
「中村、邪魔じゃないって、なんでそんな言い方するんだよっ」
「だって、俺までここにいたら、大変ですよ。狩野さんだけでも目立ちますが、俺まで一緒にいたらもっと目立ちます。そうしたら、せっかくの休日が喧嘩で終わりますよ。せっかく、その人と楽しい休日を過ごそうとしているのにも関わらず、そういったいい加減な優しさは捨てたほうがいいです」
「……わりぃ」
「いんえ。気にしてないです。どうぞ楽しい休日を過ごしてくださいね」
では、と手を振りながら中村は人ごみに消えていった。
そこで俺は自分の身のほどを知った。
「紅屋さん、さっきの後輩…」
隣でぽつーんとしていた紅屋さんに、俺は中村のことを簡単に説明した。
すると「え、あ、うん、そうなんだ…」とぎこちない表情で紅屋さんはたどたどしい声を出す。俺のこと怖いって思ったかな。中村も俺と同じでなかなかの怖い顔だし、それに、俺自身だと実感わかなくても中村を通して、俺が不良だと…認識したりして。
怖くなったかな…
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