寝癖が治らない。そんなことをこんなにも気にしたのは初めてかもしれない。
今日は紅屋さんと休日を過ごすんだ。いろんなことを話そうって昨日決めて、今日会うことになった。

「服…も、これでいいのか?」

久しぶりに俺は鏡の前でどうにかオシャレをしようと必死になる。そして必死になればなるほど、どんな服を着たらいいのかわからなくなって、結局はいつも通りの服になった。ま、いいか。



*****


「あ」

俺は待ち合わせ場所に行く途中に足をとめた。
このままいくとかなり早くついてしまう。
別にそれに対しての不都合なんてものはないけども、いくらなんでも早すぎる。

「……早く着きすぎてるって引かれるかな…」

俺は携帯の時計とにらめっこして、息をついた。

「いっか」

きっと紅屋さんなら、俺が一人勝手に気合入っていても、笑ってくれるだろうな。
それに、さ、待ち合わせに早く着きすぎても


『待った?』
『今来たところさ』

で、完璧にやり過ごせる。よかった。前に中村に借りてみていたドラマが今役に立ったぞ!



だけど…


「え?」

俺が待ち合わせの場所に着くと紅屋さんがいた。
まだ待ち合わせの20分も前だっていうのに…


「あの、待った?」

「いい、今、来たところだからっ」


思わず笑ってしまった。






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