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「中村は運命って信じるか?」
お昼御飯を屋上で食べている途中に、俺は唐突に中村にそう聞いたら、中村は驚いた顔をして、俺をじっと見つめた。
「急に、どうしたんです?」
「どうしたんだろうな…」
どうして俺はこんなことを聞いているんだろうな。わからないけど、答えて欲しいと思った。
「…狩野さん、俺は運命を信じますよ。その方が夢があっていいじゃないですか」
「それも、そうだよな…」
じゃあ、もしかしたら、今日の朝のトラック事件はもしかしたら、紅屋さんと俺だったかもしれないとか、夢見てもいいよな。だって、はじめてあった気がしなかったんだ。あの美人さん。
「なあ、中村。三年生に、美人な人っていた? 今日の朝、見たんだけど…」
「え、もしかして、運命って、恋したんですか!?」
急に立ち上がると中村は叫んだ。
「そうじゃない、ただ、知り合いかも知らない人が三年にいるかもなんだ」
「そうですかって俺がそんなので納得するわけないじゃないですか…そんな顔赤くして」
「ええ、嘘、赤くなっている?」
「そんな焦らなくても可愛いんで大丈夫ですよ?」
「そうか…」
「はいっ」
そうか? え? 可愛いなんて小さい頃以来だ言われたの。ちょっと嬉しいな。
「でも…気に食わない」
「…中村、何か言った?」
俺はぼそっと言った中村の呟きが聞き取れずに、聞き返したら「今日はいい天気ですね」と言ったのだと返事をもらった。
「あ、そうだ、三年の美人さんの話ですが、一人すっごい綺麗な人いますよ。残念ながら男ですけどね。確か…三年C組だったかな」
「名前とかわかる?」
「下ははからないですが、紅屋って人ですよ?」
「紅屋さんっ!?」
それは本当なのかと俺は何回も中村に尋ねた。
すると。中村はつまらなさそうに「俺が狩野さんに嘘つくはずないじゃないですか」とすねる。
「中村、そんなすねるなよ〜」
俺は隣に座っている中村に抱きついて頭をくしゃくしゃになでた。
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