学校に着くと、一言、紅屋さんからメールが来ていた。彼にしてはめずらしいことに『どうしよう』だけの本文だった。俺はすかさずに『何かあった?』と返した。
するとすぐに返事がきた。

『実は、俺ね、今日寝坊して、慌てて学校に向かっていたんだ。でも、半分寝ぼけていて、トラックにひられそうになったんだ。けどさ、誰か助けてくれたんだけど、びっくりして手を払って逃げっちゃった。どうしよう…』

『どうもしなくていいと思う。紅屋さんにそう思ってもらえる助けた人がうらやましいな。実は俺も今日は寝坊して学校まで走ったよ。途中でね、同志がいて、俺も奇遇にその人がトラックにひかれそうなの助けたら、手を払って逃げちゃった。まぁ俺って外見怖いらしいからしかたないかって思ったけど、もしかしたら、その人、紅屋さんみたいに俺のこと気にしているかもだなって思ったりしたら、ちょっと嬉しい。たぶん、紅屋さんが感謝してますって思っていたら伝わるさ!』

『何をそんな簡単に言ってくれてんだ。でも伝わるかな。よおし、電波飛ばしとく。そして、お寝坊さん仲間な狩野くん。もしさ、今日、の、トラックの話が、実は俺と狩野くんだったらビックリだね』

『た、確かにそう言った説も考えようによったら、在りゆる。けど、多分、紅屋さんが会ったのは俺じゃないって思う』

『なんで、そんなことが言いきれるの?』

『だって、俺、怖いってよく言われるから…紅屋さんがその人のこと怖くないって言うなら俺じゃないかなって』

『ちょっと、狩野くん。そこに座りなさい。俺は狩野くんのこと怖いと思うわけないじゃん。ただ、俺は人見知りだから、ちょっとばびくつくかもだけど…俺の知っている狩野くんは優しい人だから…』

やばい、涙腺にきた。俺は中村が不振な顔をしているのがわかっていても、この気持ちが溢れるのを我慢できなかった。

「狩野さん、どうしたんですか?」
弁当を食べる手を止めて、中村は心配そうに俺を見つめる。けど、


「いや、なんでも…」

なんでもないんだと俺は言いきった。






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