13
「で、これさ、三条の筆跡か?」
武雄はどこか可愛らしいピンクの封筒を胸ポケットから出すと、中身を読みだした。
「はじめまして。浜松へ。実はずっと君のこと好きでした。よかったら体育館裏に来てください。お話したいことがあります……とかいう、大変、ラブレターにならないラブレターを浜松の下駄箱に入れたのは?」
「は、お前!」
三条は顔を真っ赤にして、叫んだ。
「そうか、あまりにも女々しいから、俺はもっと簡潔にして、体育館裏にて待つと書いた手紙に変えておいた」
「…これ、武雄の字なんだ」
「上手いだろ?」
「うん」
……てことは、てことは?
「ちょっと、武雄、俺、武雄になにか恨みをかっているのか、こんな果たし状を俺の下駄箱にいれるだなんて!」
「浜松、それは、こいつに聞いた方がいい」
「…三条、俺に恨みあるのか?」
「これ、果たし状に見えたの?」
「うん、だって、体育館裏って、誰も来ないよ。殴るなら、絶好スポットだよ」
かつての俺の経験からいうとそうなるんだけど、なんでだろう。
三条はあきれているし、武雄は笑いをこらえている。
「なんで、違うの!?」
「浜松、その辺はゆっくり話そうな」
「えぇ?」
「俺はもう浮気みたいなかことしないから、浜松だって、もう少し、きっちりと自分のこと愛した方がいい」
「それってどういう…」
「つまり、何か困ったりしたら、俺に言えってこと」
わかったか、と武雄は俺の肩を抱いた。
すると三条は「触るな、俺の恋人だ」と怒った。
それが嬉しかった。
だから、俺も三条に再び言った。
三条は俺の恋人なんだから、浮気しないでねって。
そうしたら、三条はまた泣いた。
なんて馬鹿な人。
でもね、俺、誰かよりも、俺を選んでくれたの嬉しいよ。
秘密だけどな!
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