10
「浜松、言葉の使い方は気をつけろ」
「え、なんでなんで、俺、変なこと言った?」
「……まじになるだろ」
「え、なんて、聞こえないんだけど!」
「元気出てよかったと言った」
「あ、あれ、本当だ。さっきまであんなに悲しかったのに…武雄のおかげだ。ありがとう!」
「……馬鹿」
「?」
やっぱり武雄の声聞こえにくい。でも、武雄は俺の声を拾ってくれている。それってすごく嬉しいことじゃないだろうか。
「武雄、何だよ、授業中に」
誰…?
めちゃくちゃ怖い声がする。
三条に似ている気もするけど、俺は三条である可能性を除外した。
だって、三条は三条は優しいから。
「遅いから、こないかと思った」
武雄は淡々とそう言った。
「まさか、俺の大切な恋人に何かあったら嫌だから」
「は、何言ってる? 浮気してるくせに」
「別にそんなことはどうでもいいだろ?」
「どうでもいいってどういうことだ、三条」
…三条って、三条?
俺は必死に扉の隙間から外の様子を見ようとしたけど、光が差し込むだけで何も見えない。
「じゃあ、お前は、浜松が他の誰かと抱きあっていても何も思わないってことか?」
「そんなわけないだろ!」
[*前] | [次#]
目次に戻る→