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………体育館裏の倉庫に閉じ込められて、どれくらいの時間がっただろうか。
チャイムの音が二回聞こえたら、今、五時間目が始まっているんだろうけど。
全く外で何の音もしない。
もしかしたら、副会長さん、俺を置いて、帰ってしまったのか?
後、どうして三条は俺じゃない誰かを抱きしめていたんだろうか?
わからない。わからないけど、やっぱり俺って…いらないんだろうな。
消えてしまいたい。
そうしたら、もう、俺は辛くないのかな。
こうしていたら、昔いじめられたこと思いだす。
はじまったら終わらなかった。はじまったら俺は何をしてもい人間だと思われていた。
みんな、偏見を持ってしまって俺のことなんて何一つ知ってもくれず、嫌われた。
意味がわからない。
「泣くな、面倒だ」
「…ぇ?」
「だから、泣くな、浜松」
冷たい扉の向こうで、まだいてくれたんだ。
俺をここに一人にして何処かへ行ったんじゃないんだ。
「副会長さん」
嬉しくて、俺はさらにボロボロと泣いた。
すると副会長さんは「いい加減、名前で呼べ」と言った。
「武雄さん…?」
「武雄でいい、同い年だろ」
「武雄…あの、どうして、こんなことするんだ」
五時間目はさぼっていいのか、と俺は武雄に聞いた。武雄は「それどころじゃないだろ」と言う。知らなかった。武雄、怖いと思っていたけど、本当はいい奴なんだ。
そばにいてくれる。見捨てないでくれる。
「ありがとう…」
「浜松、気のない相手に軽々とお礼を言うな」
「なんで、武雄のこと俺好きだよ!」
だって、三条のこと大切にしてくれているから。あいつが生徒会長していられるのも武雄がいてこそだと俺は思う。
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