「はぁあ、逃げ切った」

俺は体育館裏に来ると、息をついた。

……あれ?
俺、大切なこと忘れていないか。ほら、大切なこと………ああ、手紙、体育館裏に来いってあれ!

やばいよ、きちゃったよ、どうしよう。でもここから出たら、副会長さんにつかまりそうだし、そこらへんの柱に隠れていたら、きっと大丈夫。きっと。

「あ…」

あそこだ。俺は体育館裏にある小さな扉を見つめた。掃除道具入れだけど、俺ならあの中に隠れることはできる。残念ながら、体格があまり良くないから、さ。

あははは…え?


「嘘だろ…」


勢いで中にはいったら、思いっきり外から扉を閉められた。

「入ってます、人が中にいますよー!」

俺はバンバンと扉をたたいた。
すると、外から思いっきりバンと叩き返された。

「…っ」

怖い、怖いよ。
俺は、声も息もそっと殺した。
ここには誰もいない。
そういうことにしたかった。
だって、また叩かれたら怖いじゃないか。

「………浜松、お前はおとなしく、してろ」

「え?」

俺は塞いだ耳を開いて、閉じたいた瞳を開いた。
副会長さん?

「いいか、余計なことしたら、わかってるだろ」

「は、はい、静かにしてる…」

「よし、いい子だ」






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