村井
「村井、待て!」
「……どうした?」
渡り廊下でやっと声をかけた俺に淡々と村井は振り返った。
相変わらず、男前な反応をしやがる。
平凡顔のくせに。
「さっきの、どういう意味」
「あーそのまま」
じゃあなって仕草で村井は俺に背中を向けようとした。
俺は必死になって、村井を引きとめた。
「!?」
腕を掴んで振り向かせた村井の顔は、とてつもなく赤くて、可愛かった。
こんな顔、村井がするんだって、思った。
「村井…?」
「照れくさいだけだ、馬鹿」
「そうか。あの、さ、俺もさ、村井のこと好きだよ、それだけ、伝えようとして…」
簡単に言ってやるって決めていたのに、すごく緊張してしまった。
これじゃ、もう、本当に、恋だ。
勘違いじゃない。
俺は、村井が好きだ。
変だな。本当に、変だな。
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