相違
=佐中side=
忘れられていたと言われてショックだった。
仮にもこの学年一番美形の俺を忘れるだなんて非常識だ。
「……あのさ、佐中。俺はお前のこと好きだよ?」
「はああ!?」
体育も終わり、更衣室で着替えを終えた村井はそう言って、俺の横を通り過ぎて行った。
まさに、言い逃げだ。
あいつなんて奴なんだ。
周りを見渡す。
もう、俺以外誰もいない。
「………どういう、好きだよ…」
わざわざ待っていたのか。
みんながいなくなって、俺だけになるのを?
まさか、たまたまだろう。
いつだって光のごとくすばやく着替えて教室にお前は帰るのに。
こんな休み時間ぎりぎりまでいるだなんて。
(村井)
俺も悪かった。
勝手に傷ついて悪かった。
そう、伝えたくて、俺は駆けだした。
ネクタイなんてちゃんと巻けてなくても、気にならなかった。
村井しか、見えなかった。
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