13
「……じゃあ、一回だけ、キスさせてください」
「え?」
「そうしたら、きっぱり俺は、納得します」
真顔で奈倉は言った。
俺はドキッとした。
「一回だけ、だからな」
「それでチャラでいいですよ」
「………」
「どうかしました?」
「……なんで、そんなに簡単にチャラに、できるんだよ…それ程度なのか? 俺は…俺は…」
俺は本当に奈倉のこと好きだった。
好きだった。歪んでしまったけど。
奈倉にひどいこと言ったけど。
「俺は、俺は奈倉のこと、本気で」
好きだったのに。
ずっと、好きだったのに。
奈倉のこと見つけた日から、好きだったのに。
「いやだ…忘れたくない…」
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