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「鍵、使おうかな」
ずっと何時間も先生の家の前でねぼったけど、先生は全く反応をくれなかった。
俺はしかたなしに携帯のストラップにしている鍵を取り出すと、先生の家の扉に突き刺して回した。
本当は、この扉を貴方の手で開けてほしかった。
本当は、俺ばかり貴方を追うのはもう辛いんだ。
一人よがり。
わかっているさ。そんなこと。
でもさ、わかっていても止まらないものなんだよ。恋ってやつは。
俺は先生の家の扉を開けると玄関で靴を脱いで、廊下を歩いた。
すると、不安そうな顔をしてこっちを覗く先生の顔が見えた。
「お邪魔します♪」
俺は笑った。
先生は泣き出しそうな顔をして逃げようとしたみたいだ。
でも先生に逃げる道なんてないんだよ。
出入り口は俺の後ろにあるんだからね。
「先生、いい加減、俺も堪忍袋の緒が切れました」
「……くるな!」
「どうしてです? 泣いているから、ですか?」
俺は足をとめた。
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