=奈倉side=


全てどうでもよかった。
意味のないまま俺は生きていた。
ただ与えられたものを食べて、夜寝て、また起きて与えられたものを食べて、夜寝る。
ただ単調にその繰り返しをしていた。

『おはよう、奈倉』

ありきたりな言葉だった。
聞いたことのある雑音に近い言葉だった。
なのに、俺はその言葉に泣き出したくなったんだ。
先生。
先生はあの時どういう気持ちで俺に言葉をくれたのだろう。
先生。
あの時は俺だけを見てくれていたのに。
いつから、貴方は、まっすぐに俺のことを見てくれなくなったのだろう。
俺はこんなにも貴方を愛しているのに。
愛しているのに。
どうして振り向いてくれないのだろう。
こんなにも正直に気持ちを伝えているのに。

「どうして…」

俺はただ貴方が好きなだけなのに、上手くいかない。

一人っきりになった教室で供託に座った。
先生の匂いがしそうで、全くしなかった。
冷たかった。

先生の体温に触れたいと、思った。






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